保険リンク証券(Insurance Linked Securities)について

(再)保険リスクの証券化

ILSは、保険リスクを様々な形で証券化したものです。CATボンド(Catastrophe Bond、キャットボンド、災害債券)の他にも、コラテラル再保険やILW(Industry Loss Warranty, 業界保険損失をトリガーとする相対デリバティブ/再保険)、クォータシェア(比例再保険、サイドカーとも呼ばれる)などの形式を含みます。広義では証券化されていないデリバティブ/再保険形式も含まれます。これらILSへの投資は一般的に、(再)保険引き受けとほぼ同等の経済的効果をもたらします。逆に発行体サイドからは、再(々)保険をかけていることと同等の効果となります。


意図した保険リスク以外の影響を出来る限り排除するため、

  • コラテラルは米国債MMFや世界銀行債  (クレジットリスクの低減)
  • 変動金利ベース  (金利変動による影響を低減)
  • 1-5年を年限とする中短期債  (スプレッド変動による影響を低減)
  • 様々なケースにおける早期償還条項

などの特徴があります。


主な発行体は保険会社・再保険会社ですが、一般事業会社からの発行も増加しています。

リスク源泉は大きな自然災害や疾病・死亡率の急変動など

代表的なリスク(ペリル)として、自然災害では、北米ハリケーン・洪水・地震・竜巻・山火事、日本台風・地震、欧州暴風雨・地震・洪水など。非自然災害系では、死亡率の急上昇や医療保険・自動車保険などの支払い比率急上昇などが挙げられます。


これらに共通する点は、

  • 低頻度ながら大規模なイベントリスク
  • いつ発生するか予測困難な事象に対するリスク

であり、(再)保険会社からのリスク移転ニーズが常に存在しています。


主要なリスクは、リスクモデル会社(AIR Worldwide、 RMS、EQECAT、KatRisk、Millimanなど)のモデルを通して定性的・定量的に分析されるのが一般的です。


今後の新しいエリアとして、

  • 地域としては日本を除くアジアからの発行
  • 種類としてはテロリスク、サイバーリスク、長寿リスクなど

が注目されています。

トリガーの形式

リスク(ペリル)の種類として、

  • シングルペリル (単独のペリル・地域)
  • マルチペリル (複数のペリル・地域の組み合わせ)

判定に使われる損失の種類として、

  • 実損型 (保険会社等の実際の保険損失額)
  • 業界保険損失型 (PCSやPERILSなど)
  • パラメトリック型 (マグニチュードや中心気圧などの実測値)
  • モデル損失型 (上記パラメータを元にモデルで損失を算出)


また計算方法の型として、

  • イベント単発型 (イベント毎に判定:ファーストイベント型、セカンドイベント型、カスケード型など)
  • 累積損失型 (主に年間累積で判定)
  • 単発&累積複合型

などが挙げられます。


該当イベントによりトリガーに抵触した場合には、元本の一部または全部が棄損する仕組みとなっています。

高い流動性・価格透明性

ILSの中でもCATボンドは、セカンダリ市場で活発にトレードされており、従来透明性の低かった再保険価格に透明性をもたらしました。従前は、再保険価格を反映する「眼鏡」のような役割を果たしてきましたが、最近では資本市場からの資金流入と相まってCATボンド市場の価格リーダーシップが強まっており、再保険市場における価格の一段の効率化が進んでいます。


他市場との相関が低く、かつ必要なときに換金が可能という点は、CATボンドの投資家にとって、最も重要な特徴の一つといえます。

20年超の確固たるヒストリー

再/保険業界に大きな損失を出した1992年のハリケーンAndrewをきっかけに保険リスクの証券化が始まり、2005年のハリケーンKRWの後、市場の拡大が加速しました。過去20年超のヒストリーの中、様々なイベントを乗り越えながら、ILS/CATボンド市場は順調な拡大を続けています。


[主なイベントヒストリー]

1998年 LTCM破綻 (金融危機)

2001年 NYテロ (人為災害)

2005年 ハリケーンKatrina・Rita・Wilma (自然災害)

2008年 リーマンショック (金融危機)

2011年 東日本大震災、ニュージーランド地震、タイ洪水、北米竜巻 (自然災害)

2017年 ハリケーンHarvey・Irma・Maria、メキシコ地震、カリフォルニア山火事 (自然災害)

災害ファイナンスの一翼を担い、社会に貢献

大災害発生後の復興資金ファイナンスの重要性は、近年ますます高まっており、ILS/CATボンド市場も、その一翼を担う形で成長してきています。巨大な世界の資本市場が参入することで保険キャパシティが安定化してきており、大災害が発生するたびに大きく変動していた再保険料率が、近年あまり上昇しなくなってきています(再保険価格サイクルの縮小)。


ILS/CATボンドの存在意義の一つは、まさにこういった再保険市場の効率化により、被保険者のベネフィットが拡大することにあります。世界中のより多くの人々や組織が、様々なニーズにおいて、より適正価格で保険に加入できる(=リスクヘッジできる)環境を構築する手助けとなっています。最近では、国や政府外郭団体、WHO(世界保健機関)といった国際機関等が直接市場を利用するケースも増加しており、ますます社会的役割が拡大しています。